競売だと、安く物件が購入できると聞いたんだけど、注意点があれば知りたい。
こんなテーマに関する記事です。
競売による入札の場合、マンションを安く取得できる可能性があります。但し、通常の不動産取引とは異なりますので、いくつかの注意点があります。それらの点を踏まえて、検討する必要があります。
不動産の取得方法として、通常の売買の他に、
競売
によって取得するという方法があります。
近年は、一般の方も競売で不動産を取得される方も見受けられるようになってきました。
ただ、参加者が増えたからでしょうか、落札価格も高めになってきています。
では、
競売によるマンションの取得
は、選択肢にいれても良いのでしょうか。
個人的な見解になりますが、結論から言いますと、自身の居住用の場合、
一般のユーザーは、競売によるマンションの取得は避けたほうが良い
と言えます。
なぜなら、
リスクが高く、手間もかかる
からです。
また、せっかくご家族で住まわれるのに、競売といういわくつきの物件だと、あまり気持ちのいいものではないという、心理的な面もあります。
下記に順に説明していきます。
競売とは?!
その物件の所有者(債務者)が、
住宅ローンの返済ができなくなった場合
に、金融機関(債権者)が裁判所に申し立て、担保としていた債務者の不動産を差し押さえ、裁判所の権限によって強制的に売却することです。
正確には、通常、住宅ローンの返済できなくなった場合は、住宅ローンの保証会社が金融機関に残債を弁済します。
裁判所への申し立ては、その保証会社が行うか、もしくは、債権がサービサーと呼ばれる債権回収会社に移った場合は、その債権回収会社が行います。
時系列で記載すると、下記になります。
※債権に関して、保証会社からサービサーと呼ばれる債権回収会社に移る場合もある
競売物件のリスクについて
下記に、順に、競売の際のリスクについて記載します。
管理費、修繕積立金の滞納
マンションの競売物件の場合、管理費、修繕積立金の滞納の有無という点が、大変重要になってきます。
例えば、マンションの競売物件の中には、
最低入札価格がかなり低い金額
で設定されている物件があります。
その場合は、
管理費、修繕積立金が長年にわたって滞納されている
可能性が高いと言えます。
※通常は、物件明細書等に管理費の滞納分が明示され、滞納額を控除して最低売却価格が決定されます。
滞納された管理費、修繕積立金は、
競売の落札者が支払う
ことになります。
長年にわたって滞納した結果、滞納額が百万単位になっているケースもあります。
ですので、競売における最低入札金額が低い場合で、管理費、修繕積立金の滞納がある場合は、
実質は、「入札金額」プラス「管理費、修繕積立金の滞納金額」
で、物件の価格を判断する必要があるということになります。
競売物件に関する情報は、事前に確認することはできますので、しっかりとチェックしておく必要があります。
下記サイトで、競売の3点セット(物件明細書、評価書、現況調査書)を確認できます。
BIT 不動産競売物件情報サイト
※(参考)元の所有者に、滞納管理費の請求が認められた判例もあります。
[判例]マンションを競売で買い受けた者が支払った滞納管理費を元の所有者に求償することが認められた事例
https://www.retio.or.jp/attach/archive/63-036.pdf
占有者の立ち退き問題
競売物件には、その住戸に、債務者が住んでいる場合が多いというのが実情です。
逆に空き家になっているほうが少ないと言えます。
競売で落札した後、債務者に退去してもらう必要があります。
その退去の交渉は、落札者が行うことになります。
引っ越してもらうにも、債務者はお金が無い場合が多い為、引っ越し代などの経費を落札者が負担するなどして話し合うケースが多くなります。
また、債務者が話し合いに応じないケースも想定されますので、手間のかかることとなります。
話し合いがまとまらない場合は、強制執行という方法があります。
この場合は、裁判所に「不動産引渡命令の申立て」を行い、「引き渡し命令」、「催告」、「断行」といった流れで対処します。
「断行」によって、強制的に退去してもらうことになりますが、この時に発生する実費(運搬費用、立ち合い人等の日当など)も落札者が負担します。
いずれにしても、手間と費用がかかります。
また、強制執行を行うためには、
債務名義上の債務者(執行文に記載された債務者)と目的建物の占有者とが一致しなければならない
ため、
債務名義上の債務者と異なる占有者が居座った場合には強制執行が難しくなる
という注意点があります。
その他のリスクは?!
その他にも、主だったものとしては、下記のリスクがあります。
・事前に内見できない
競売の3点セット(物件明細書、評価書、現況調査書)の書面によっての判断になります。
・契約不適合責任がない
物件に不具合があっても、売主の責任は存在しません。
・鍵の引き渡しがない
通常は、売買の決済の際に、売主から物件の鍵の引き渡しを受けますが、競売の場合は、鍵の引き渡しはありません。
あくまで、落札者自身が、前所有者に立ち退き交渉をして対処します。
立ち退きの際も、合意書などの書面で取り交わしをしたほうがリスク回避になります。
その他にも、個々の物件によって状況は異なりますが、競売物件にはリスクは伴いますので、十分な注意が必要です。一般の方は、リスクを考えると、マンションの競売は避けたほうが賢明と言えます。
【参考】任意売却について
参考までに、「任意売却」について説明しておきます。
これは、競売の申し立てが行われた後、実際に競売にかかるまでの間に、
物件を売却する
という方法になります。
具体的には、競売にかかる前に、
競売で見込んでいる金額かそれ以上の金額で物件を売却する
というものになります。
この方法の場合、債権回収会社も競売の手間が省けるのでメリットがあります。
もっとも、買い手が見つからないと前には進みません。
稀に、マンションの売買物件で、「任意売却物件」を記載されている物件があります。
こういった任意売却物件をメイン扱っている不動産会社もあります。
この「任意売却物件」についてもリスクがあります。
つまり、通常の物件と違って、金融機関との調整がはいりますので、申し込みをしても、必ずしもスムーズに購入できるとは限りらないということです。
また、以前に、任意売却をメインで扱っている不動産会社とやり取りしたことがありましたが、対応がかなりいい加減でした。
つまり、信頼できない会社もあるということです。
任意売却物件を問合せする際は、信頼できそうな会社かどうかを見極める必要があります。
まとめ
競売物件は、その価格(最低入札金額)だけを見ると、なんだか、
「物件を安く買えていいなぁ」
と思われるかもしれませんが、実際は、上記に記載したようなリスクや手間がかかりますので、そういった点を含めると、
単純に割安とは言い切れない
ということになります。
また、競売にいたるいきさつがあった物件ということで、実際に住まわれる際にも、心理的にマイナスの影響を及ぼす可能性もあります。
逆に、業者が転売目的で競売で物件を落とすケースや、収益物件として運用するようなケースでは、自身が住むわけではないので、そういった面も気にする必要はないと言えます。
いずれにしても、競売物件に関しては、そのリスクを考慮して判断されることをお勧めします。